転校生(6)




 学校を出た浅緋と愁は街でCDショップに来ていた。
 お目当てのCDを見つけた愁は早速会計を済ませ、その帰り道で「付き合ってあげたんだから」という理由で有無を言わせ浅緋にジュースを奢らされていた。

「俺、今月厳しいんだけど」

 愁は財布の中身を確かめながら文句をたれた。

「ごちゃごちゃ言わない! 今度は私が何か奢ってあげるからさ」

「マジで! 来月またCD出るんだけどさ」

「それは自分で買いなさい」

 軽く頭をこずく。愁も痛くもないのに大げさにリアクションをして二人で笑った。
 愁といる時間は楽しい。でも時々違和感を感じる。
 ほんのたまにだが自分のことを申し訳ないという目で見ているのだ。
 ここ数日そんな日が多かった。そして今日は特に多い。
 こうしてじゃれあっている間も、時折寂しそうな目をする。

「愁くん、何かあった?」

 そう尋ねると、愁は意味が分からないという顔をして「何が?」と逆に聞き返してきた。

「嘘。絶対何か隠してる。私がわからないと思ったら大間違いなんだからね」

 愁は感情を表す時頭を掻くくせがある。
 照れてる時や考えてる時、苛立っている時、そして何か隠し事をしている時。
 今も困ったように頭を掻いた。

「なぁ、一希って藤宮ってどう思う?」

 よりによってこの質問。浅緋がギクリと固まる。
 脳裏に一希がの顔が浮かぶ。同時に今日あった様々な出来事も。

「何でそんなことを聞くの?」

「別に。ただ気になっただけ。その、幼馴染として?」

 誰に尋ねているのか、最後は疑問系だ。

「分かんない。とても怖い気がするし、優しい気もする。愁くんにだけ話すけどね。どうしてだろう。懐かしい気がするんだ」

 ホームルームの時に聞いてきた一樹の言葉を思い出す。
 ――変わっていないな
 それはつまり以前にも会ったことを意味していた。
 いつ会ったのだろうか。記憶を探ってみるが出てこない。もう少しで思い出す気がするのに・・・。

「私が忘れているだけなら、相手に失礼だよね」

 しょんぼりと肩を落とす浅緋の頭を愁はポンと優しく叩いた。

「気にすんな。人間忘れる生き物だって」

「そうかなぁ」

 家につくと隣同士なので玄関先で別れる。
 離れる前にひょいっと愁が浅緋の持っていた缶を取り上げた。

「捨てといてやるよ。ちょっと先のコンビニに寄ってくるから」

「え、でもコンビニにはさっき寄ったじゃない」

 その証拠がそのジュースだ。怪訝そうに愁を見やる。

「あー、買い忘れたものがあったんだよ。いいから先に帰ってろ」

 歯切れ悪く答えると、愁は更なる追求から逃げるようにさっさと行ってしまった。